光を見た。
遥か高みから白い光が降り注ぐ。
カグツチよりも明るく、太陽よりは優しい。
横たえた体を光に預け、おれは感じたことの無い安らぎに満たされていた。
ここはどこだ。
空を見上げると、何かが螺旋を巻いておれを見下ろしている。
降り注ぐ羽根。あれは天使だろうか。
おれは、衛生病院にたどり着く直前に倒れて……そして、
そうか――死んだのか。
死ぬってこんなもんなのか。
思ってたよりは怖くない。むしろ心地よいくらいだ。
もう、胸も全然苦しくない。
逆光に照らされた天使たちが、口々に何か呟いている。
その言葉は、死者への祈りか弔いの歌か――。
「バカね」
「本当に頭悪いんだから」
「負け組」
「大体君は昔から」
………………。
…………………なんだこりゃ。
眩しさを堪えておれは空を見た。
「考えが足りないのよ」
「もっとしっかりしてくれないと」
「本当にバカだわ」
「バカ」
……違う。
口々におれを罵っているのはあれは天使じゃない。
あれは………
千晶だ。
「無茶ばかりして」
「頭悪いからしかたないわね」
「しょせんこの程度」
「負け組」
「バカ」
千晶の群れが天空に螺旋を巻いて、好き勝手なことをほざいている。
見渡す限り、千晶、千晶、千晶、千晶。
おいおい勘弁してくれよ。
死んだ後までおれは千晶と一緒なのか。
いくら幼馴染みだからってあんまりだ。
「バカよね」
「宇宙の果てまで頼りにならない」
「役に立たないっていうか」
「まったくもう」
「どうして君はこうなの?」
「もうちょっと考えて行動してほしいわ」
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