追いかけてくれるかとわずかばかりの期待も、工事中の歩道橋を渡る頃には消え失せていた。
急ぎ足を緩め、車道を見下ろし、途方に暮れる。
終電はもう無い時間だ。駅を避けて公園まで歩いた。
制服だったから、夜明かしできる店にも入れない。脱ぐわけにもいかない。
交番を掻い潜り、鉄門を乗り越え、人気の無い代々木公園で始発を待つ。
始発を待ちながら、自分の中に沸きあがる何かを期待し、それを待った。
叩きつけるための怒り、あるいは世界を、自分を嘆くための悲しみ。
諦めはとっくに身体の一部になっていたから。
来い。と、願った。
手の傷を舐めた。来るなら今しか無い。
今なら、それがどんな醜いものでもオレは真摯に受け止めるだろう。
来い。
けれどそれらは来なかった。
オレは涙一つ流さなかった。
最後に得たものは圧倒的な孤独だ。
胸を押し潰す淋しさはもう痛みではない。自己憐憫のための甘みも無い。
ただ、一人きりだ。
それだけが触れることのできるただ一つの確かさ。
街灯を見上げる。
ここでイヌノを待っていた。
どうして来なかったんだろう。あの時だって待っていたのに。
オレはずっと待っていたのに。
来ないんだったら待つべきじゃない。
始めからすべてを諦めることだってもっと早くに、
オレはちゃんとできたはずなんだ。
知っていたのだけれど。
携帯に残っていた履歴を一つ一つ繰り返し確かめた。
ヒジリさんのも、千晶のも、トモダチのもある。
あいつの着信を見つけてリダイアルを押した。呼び出し音が鳴る前に切る。
来たメールも、読めるものは全部読み返して繰り返して、
顔を照らす携帯の明かりをオレは熱心に眺め続けた。