「――……嘘つき」



 声が掠れた。



「大人は嘘つきなんだよ」




 よれたシーツに溺れて息も絶え絶えなオレに比べ、ヒジリさんは涼しい顔で

 煙草を咥えていた。







………あれからのことはあんま思い出したくない。

結局オレはヒジリさんに好きなようにイかされまくった。

うわ言で何を口走ったとか、考えたくもない。



 ヒジリさんがそういう意図で圧し掛かってきたとき、

オレは本気で逃げたけど、足を掴まれベッドに引きずり戻された。









「大丈夫か」



 今さらヒジリさんは優しい声を掛ける。

 向けた背中を静かに撫でている。



「……そういうのは最中に聞けよ、クソオヤジ」

「土壇場で逃げようとするからそんな目にあうんだろうが」



 わかってる。くすぐったいだけじゃなかったよ。







「ケツが痛ぇ」

「あんな腰振るからだ。

 ……というかお前、本当に初めてか?よがりまくってたな」

「ああ、初めてじゃねえのかもな」

「よかったな。お前素質あるぜ」

「オカマの素質なんか欲しかねえよ」




 ヒジリさんは煙草に飽いたのかオレの腰を抱き寄せた。

 背中越しに抱きしめられて息が詰まる。

 唇をなぞられ指を咥えさせられた。

 着メロが鳴ってる。人の不安を煽るようなマイナーコードの曲。

オレのじゃない。




「鳴ってるぜ。あんたのだろ」

「ほっとけ。どうせ仕事だ」

「何の曲?聞き覚えあるんだけど」

「トワイライトゾーンのテーマだ。……ガキは知らんか」

「知らね」



 噛み付いてから指を吐き出す。着メロはすぐに止んだ。

 オレは身を起こして、ベッドサイドの鏡を見た。

 ひでえ顔だ。頭もボサボサだ。

 帽子被ってきてよかった。誤魔化せるもんな。



「こっち向け、勇」



 顎をつかまれキスされた。

 あの、口を犯すような激しいくちづけ。

 オレはヒジリさんのチョーカーに指を掛け、

 こないだよりは上手に舌を絡めた。








 三つの約束は全部キレイに破られた。

 全部オレのせいだと、ヒジリさんはオレを責める。そうとは言わずに。



























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