ギッ、とパイプベッドがきしむ。
「っ……………」
柔らかくぬめる舌が勇の舌を引き出し、吸い、唾液が混じり、唇を甘噛みする。
体操着の下にまで手を差しこんできたので、勇はさすがに抵抗をしめした。
ここは学校で、授業中なのだ。
「だ……め……だって……」
きっぱり拒絶したつもりだったが、抗いはすでにキスで煮とろけて弱々しいものだった。
イヌノはそれを誘いと解し、すっかり目覚めてしまった昂ぶりを、半パン越しにぐいっと押しつけてくる。
「お前……誰来るかわかんねえのに………」
「……誰も来ねえよ。授業中だし。養護の先生いねえし」
「でも、ヤバイって………」
「やべえよな」
やべえやべえと言いながら、勇の胸を撫でさすり、厚い布の上から胸の突起を器用に探り出す。
「は………」
体操着越しにクリクリと摘まれ、甘い刺激に勇が顔を背ける。
引っかくように弄っているうちにそれは固くしこり、布の上からでもそうわかるほどに尖ってしまう。
「乳首、前より感じるようになったよな」
「なってない……」
「前もっとくすぐったがってたじゃん。最近はいじるとすぐ乳首固くなるし」
「……あんまいじんな………」
「どうして?」
不思議そうに訊ねながらも、イヌノは尖りを弄る手を緩めない。
「……ん……乳首感じる男って……それどうよ……っ」
「え。かわいいじゃん」
「ぃっ!」
指で挟んだまま背が反り返るほど引っ張りあげられ、甘い痺れが腰まで走った。
すっかり指の形に捩れた体操着の布の下、いじくり回された乳首が固くしこりきっている。
「胸いじっただけでこんななってんだもん。勇、やっぱエロいよ」
イヌノが毛布の下で探ると、触れられもしていない勇自身が、固く張り詰めてハーフパンツの前を押し上げていた。
布越しに軽く撫でられると、それだけで腰が跳ね上がってしまう。
「っく…コラ…いい加減に…………」
発情したのは勇のほうが先だった。
ぬくもりをねだった時、イヌノの汗の匂いに勇は欲情した。
学校という場でその欲望に乗り切ることもできず、どうしたものかと肉体の熱を持て余す。
「……このままほっといたら勇のほうが辛ぇだろ」
布の上から先端を指先でつつかれ、勇はイヌノの首に縋りついた。
「……やべえって……授業……」
「擦るだけだから」
伸縮性のあるジャージ素材の感触を、イヌノは掌で愉しんでいた。布越しに張り詰めた硬直をグニグニと揉みしだいて擦った。
「はぁっ!………はっ……ダメだって……っ!」
イヌノの手首を押さえながら、流されまいと勇は必死で耐えていた。
もっときつく叱らなくちゃと思いながら、潤みきった抵抗しかできない。
「下着……汚れるっからさぁ……」
「もう遅ぇよ。勇のここ」
イヌノは勇の手首を掴むと、勇自身の先端に触れさせた。
「……ほら」
ポリエステル地に粘液質の滴りが滲み、ぬるっぬるっと指先に絡まる。
掌を押しつけられ、自分のそこを無理矢理擦らされた。
「――染みになってんだろ」
「ぁ……やめ……ぁ…」
布越しの強制自慰と抑えの利かない先走りに、勇は耳まで赤くなり、羞恥がまたぬめりを吐き出させる。
反応を面白がったイヌノは、勇の手に自分の掌を重ねてぐいぐいとしごき上げた。
ぬるつきが掌とジャージ生地に広がり、ニチッニチッと粘着質の音が嫌でも耳に入ってくる。
「このままイったら、下着の中すげえことになるんだろうな」
「や……っやだってば!手ぇ……動かすのやめ……っ」
一度欲望に火が点くとイヌノはひどく執拗だった。
自分が落ち着くまでねちっこく勇の体を苛む。
本気でこのまま弄り倒し、着衣のまま吐精させるつもりなのだろう。
布地を隔てたもどかしい快感が勇の正気をかき乱した。
今手を離されたら、下着の中に直接手を入れて恥かしい真似をしてしまいそうだ。
イヌノの手によって弄らされているうちに、勇の慰めが自律的な動きに変わってゆく。
イヌノはほくそえんで右手だけ放し、ジャージ生地に包まれた勇の尻をつかむ。
小さな双丘を揉み擦りながら、割れめに沿って中指を食いこませる。
「やぁ……だっ……!」
勇は腰を引いてその刺激から逃れようとするが、下腹部を押さえつけるイヌノの左腕がそれを許さない。
濡れた声を噛み殺しながら、指が刺激しやすいように、無意識のうちに足が開いてイヌノの膝を挟む。
その間も両手で激しく自分の雄肉を刺激する。
すでにイヌノの意地悪な手は添え物だ。
二人の掌は、汗と、布から滲み出た淫液でべっとり濡れていた。
「……ぁ…ぁ…いい加減にしないと怒るって……ぁ…」
「自分で弄ってて何言ってんだよ勇。保健室でこんなエッチな真似してていいのか?」
揶揄するようなイヌノの囁きに、勇は束の間我に返り、自分に快楽を与えていた手をとめる。
イヌノはそれを許さず、はちきれそうな先端を軽く握って小刻みに動かした。
「ひぅっ!」
「ほら……。ここで止めても辛えだろ」
後ろは後ろで布の上から窄まりをぐりぐりと刺激される。
「はぁっ……ぁっ……ぁあっ! だめっ……来ちゃうよぉ……!」
うっかり引きとめてしまったことを心底後悔しながら、快楽の際に流されそうな身体を勇は必死で抑えた。
こんな場所でこんな風に絶頂を極めるわけにはいかない。
どうすればいいかとうろたえて、イヌノの欲望さえ落ち着けば、なぶり回されずに済むだろうと勇は考えた。
「イヌ……イヌノぉ……っ」
「いいよ。いっちゃえよ」
勘違いしたイヌノが促す手を速めた。勇の腰が大きく突っ張り、足の親指が反り返る。
「ち、違う……って…!」
寸前まで追い詰められ、やっとの思いでイヌノの手を振り解く。
はぁはぁと荒い息をつき、勇はキッとイヌノを睨みつけた。
「しゃ……しゃぶってやるから脱げっ!」
「え。マジで!?」
さっさとスッキリさせて授業に戻さないと、この保健室でどこまでエスカレートするかわからない。
いつなんどき誰が来るかわからないというのに。
これは自衛だと勇は自分に言い聞かせ、イヌノの上反りに手を伸ばす。
「いやでも、走って汗掻いたし。汚ぇよ」
「それはもういいから。気が変わんないうちに出せ! 早くしないと人が来ちゃうだろ」
イヌノは少し躊躇した後に、膝立ちになって下着をズボンごと膝まで下ろした。
腹を打ちそうなほど立ち上がった肉棹が、勇の目の前に突きつけられる。
何度も触れて貫かれているそれに、勇は戦々恐々指を沿わす。
「……なんか…いつもよりでかくねえか………?」
「すげえ興奮してる。
……やべえよな、自習とはいえ授業中なのに」
「………つーかオマエ、一発抜かないと授業戻れないだろ」
「いや、そういうわけでもな、い、と」
男茎の根元を舐め上げられ、イヌノの言葉は途中で上擦った。
すぐには咥えずに、付け根の辺りを舌で探るようにねめる。
若草がじゃりじゃりと舌先に触れ、雄の匂いがした。
ゆっくりと、根元から舐め上げられるのが好きだと知っている。
裏筋に沿って舌を這わせると、イヌノがふうっと熱のこもったため息をついた。
前髪をかき上げて、顔を見ようとするので、
「見るなよ」
意固地になった勇は毛布を頭から被った。
「見えねえ〜」
「毛布上げたら怒るからな」
イヌノはブツブツ文句を言っていたが、舐め上げた先、えらの張った部分を咥えると、「うっ」と呻いておとなしくなった。
汗と先走りが混じった、イヌノの味が咥内に広がる。
先端を飴のようにしゃぶると、透明な露が鈴口からどんどん滲み出てくる。
勇はそれを一滴も溢さないように舐め取った。
保健室のベッドを汚すわけにはいかない。
歯を立てないように唇で護りながら、勇は精一杯口を開いて肉筒を咥え、頬をすぼめて吸い上げた。
えずく寸前まで口の中を犯させ、ストロークをかけながら熱心に肉柱を貪る。
これ以上は無いくらい堅くなっていた剛肉が、口の中でまた膨らんでゆく。
浮き出た血管の感触も、脈打つ反応も、勇は丹念に味わった。
口淫を施すのは好きだった。
悦んでもらえるうちはきっと見捨てられずに済むだろうと、どんなに愛されても晴れない怯えがまだ離れない。
何より、愉悦を与えている間は自分を見失わずに済む。
「――っ、おいしい?」
興奮したイヌノが能天気に問いかける。勇は唾液の糸を引いて口を離し、
「う……まいわけねえだろ。アレの味しかしねえよ」
毒づくと、また夢中で肉茎にしゃぶりつく。
オマエのだからおいしいよ、と心の内だけで答えた。
イヌノから見えない毛布の下で、勇は自分のハーフパンツの中に空いている左手を忍ばせた。
解放されなかった欲望が重く熱を持って下半身にわだかまっている。
刺激されなくても勃起は全然和らがず、下着の中は漏らしたようにぐっしょりと濡れていた。
代えの下着を心配しつつも、どうにも我慢できなくなり、こっそりと左手で自分を擦りあげる。
口には限界まで牡を頬張ったままだ。
保健室で淫らな行為に耽る罪悪感が、勇の肉をいっそう熱く固く強張らせる。
「……勇、いじってるのか?」
「んぅっ」
咥えたまま首を横に振ったが、イヌノは意地悪く毛布をめくった。
気づかれないようにゆるゆるとしごいてつもりだったのに、もどかしさゆえに腰を使ってしまっていたらしい。
「――おれのをしゃぶって興奮しちゃったのか」
下着の中で慰めている姿を見られ、勇は唾液の糸を引きながら雁首を口から放した。
「……見るなって言ったのに……っ」
上目遣いで睨みつける。
「なぁ……勇。おれ、すっげ、入れたいんだけど」
イヌノが立ち膝になって勇の背中に指を這わせる。
背骨の浮き上がりを撫で、ハーフパンツを膝まで下ろして指先を進めた。
「ダメ?」
「はぁっ……いいから……さっさといっちまえってば……っ」
――イヌノ自身も限界が近いことは味覚でわかる。
さっさと出させて、自分は男子便所ででも抜いてくりゃあいい。
勇はしきりに廊下の向こうを気にしていた。
――こんなところでケツ出してるのを見つかったら退学モンだ。
四つん這いになっていっそう激しく口を使う。
イヌノは息を荒げながら、中指に唾液をつけて勇の尻の窪みを直にくじる。
待ちかねていた刺激に、肉の窄まりがひくひくと指を呑みこんだ。
「うわ……すげえ。吸いこむぜ」
「っうぅっ!んーっ!」
剛肉に声を塞がれて、勇の否定はくぐもった喘ぎにしかならなかった。
中指の一番太いところまで沈められ、ゆっくりかき混ぜられると、小さな尻たぶがきゅっと引き締まる。
「んぅうっ!うぐぅぅぅっ!」
太い指を入れたり、引き抜いたりを繰り返され、勇は舌撫を止めて喘いだ。
緩んだ口元の隙間から、淫液交じりの涎が顎まで滴る。
ともすれば快楽に流されて唇を離してしまいそうになる。
勇はイヌノの膝を拳でどんどんと叩いたが、イヌノはそんな慎ましい抗議など気にもせず、刺激に餓えた秘肛を苛むのに夢中だ。
「――勇のここ、指抜くとすっげぇ物欲しそうにぱくぱくしてる。魚の口みたいだ」
「んぁぅっ!い………いじんなってばぁ……っ!
集中できねえんだよ……このバカッ!
ああもう、オマエに童貞なんざ捨てさせるんじゃなかったぜ」
「魚にエサやりてぇ〜。ちんぽいれてえよう」
「帰ったらな!」
ちんぽ入れたい入れたいとごねるイヌノを押し戻し、勇は必死に舌を操った。
先走りに濡れそぼる自身を放置し、目の前の剛直に懸命に仕えた。
裏筋を中心に吸い舐り、右手で茎根、左手で淫嚢を優しく愛撫する。
吐精を急がせながらも、勇は決して技巧に性急さを加えなかった。
最後までゆっくりと仕上げたほうがずっと気持ちいい。
同性ゆえの共感を駆使し、勇は丁寧にイヌノの性感を積み上げていった。
「勇……っ、ごめん……出そうなんだけど……」
「うん……口に全部出せよ……」
唾液で頬に貼りついた前髪を耳に掛け、勇はむせそうになりながらも上顎の奥の柔らかい部分まで、猛った槍先を迎え入れる。
「う………っく」
くぅっ、と密着する喉奥に、吸いこまれそうな錯覚をおぼえながら、イヌノは溜まりきった欲望をそこに叩きつけた。