深夜の残業中に彼は自分が勃起していることを知る。


性的興奮とは関係がない。扱っていたのはある殺人事件の残務処理だ。

それで興奮したのなら言い訳もなく変態だ。ただの疲れ魔羅だろう。

使い出が無い癖に自己主張を始めるペニスを哀れに思い、

ズボン越しに一撫ですると思いのほか気持ち良かったので彼は本格的に自慰を始めた。


椅子が耳障りにきしむ。

あいしていると、ついぞ聞けなかった言葉が想像の唇を割ると同時に彼はアクメを迎え、

黄色がかったザーメンをティッシュに吐き出した。


吐き出しながら目尻に涙が滲んだ。


どうせいなくなるなら犯してやればよかった。

欲望のままに犯し抜いてぼろぼろに判りやすく傷つけて、そうすれば逃げ出されても合点がいっただろうに。

彼は少し泣いて、それからファスナーを上げ手を洗って仕事に向き直った。






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