Love is beautiful.






「浮気しているかもしれないんだ」






数日後、バイトの帰りに成歩堂から電話がくる。

久しぶりだなぁと浮かれて出てみりゃあ、いきなりそんなことを呟かれてオレは何のことだかさっぱりよ。



「誰がよ」

「御剣に決まってるだろ。他に誰がいるんだよ」



ちょっと怒ったような口調にオレは白けたね。

たまに電話してきたかと思えばソッチの話題しかねえのかよ。

まぁでも仕方ねえのかもな。

今までは相談相手なんかきっと誰もいなかったんだろうから。

オレだっていつも聞いてもらってたワケだし、これでようやくお互い様かねぇ。



「御剣が――」



浮気するようなタマかよ。と言いかけて、ようやくオレは思い当たったわけだ。



「こないだ無断外泊だったんだ。

髪から煙草の匂いがしただ。……アイツ、煙草なんて吸わないのに。

おまけに携帯の電源は切りっぱなしで」


「気にしすぎじゃねえの?

そりゃ一人で飲みてえこともあるだろうしさ。

人のいる場所うろついてりゃ煙草の匂いも着くだろ」

「――そっか。そうだよな。

考えすぎかな」

「そうそうそうそう。

疑い始めたらキリがねえしよ」

「御剣は知らない男と関係持つような奴じゃない。

それは信じているから」


「おうおう、その意気よ」

「………ありがとう矢張。なんだか不安だったんだ。助かったよ」

「いやいや、気にすんなよ。恋する男はみんな不安なモンさ。

ま、頑張れよ」



適当に応援して、オレはそそくさと電話を切った。



あー、ビックリしたぜ。



そっか、そうだよな。

アレは浮気に入んだわ。少なくとも成歩堂にとってはな。

バカな話だけど、オレには間男の感覚なんか全然なかった。

御剣が成歩堂のカノジョだったら、オレはちちを押し当てられてもきっと寝たりはしなかった。

――たぶん、だけど。

友達のオンナと寝て喜ぶようなセンスはオレにはねえ。

ただ、御剣はな。野郎同士だからな、

オレもマス掻きあってるような感覚しかなくてなぁ。

あー、悪いことしちまったのかなぁ。

オレっていっつもこうなんだよな。

その場その場であんま考えナシだからよ。いつだって気付いた時には遅いんだよな。



ま、でも。

やっちまったモンは仕方ねえよなぁ。



それにしても、だ。

改めて気になるんだよな。



なんであの日、御剣はオレん家来たんだろうなぁ。

なんであんな、誘うような真似したのかとか。



「あ」



成歩堂と話す機会があったら、聞いておこうと思った御剣の連絡先。

また聞くの忘れちまったなぁ。

渡したいものがあったんだけどよ。



ま、いいか。



そんなこと、ウカツに聞ける空気じゃなかったもんな。

さすがに。

















で、まぁ。



オレも日々の生活にかまけて、そんな電話があったことも忘れた。

豆腐屋のバイトもやめ、部屋を引き払う算段を立てて、役所行ったり

色々忙しい日々だったワケよ。



連絡はなかった。

成歩堂からも、――御剣からも。








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