――広い法廷で、今度は私が彼の姿を探す番だった。
どれもよく似た背広の背中が皆御剣に見えた。
薬指に嵌められた指輪の全てが御剣に見えた。
不思議なもので――まだ繋がりがある頃は放っておいても視界に入った姿が、
探せば探すほど、どこにもいない。
エレベータの扉が開く度に一抹の期待を抱いてまた落胆し、その度に終わったのだと自分に言い聞かせる。
あの男が戻ったはずの家庭を、私は既に失っていた。
官舎に帰る頃には眠っていた妻と子供ら。
それでも、人のぬくもりがあるのと無いとでは明らかに温度が違った。
無人の自宅に、私の足はますます遠のいた。
一人の時に思い出すのは、海外に渡った妻子ではなく、ただ、あの男の身体だけなのだ。
対等ではなくなったから、御剣は別れを選んだのだろうか。
私の老いた体では何一つ繋ぎとめられなかったのか。
ただの心変わりなど受け入れられるはずもなく、
ありとあらゆる理由を数えてはそれを一つ一つ潰していった。
私が家庭を失ったことなど、きっかけにしかすぎない。
あれほど執拗だった男が醒める理由など一つだけだ。
私の心を手に入れた瞬間、すべては終わりへと向かっていたのだ。
別れと共に、あの男は私から、確実に何かを奪い去った。
私は飢え、乾いた。
DEAD M A N WARKING