その夜、いつものホテルで、妻と別居することになったことを彼に告げた。
黙り込む御剣に、
「貴様とのことは何も関係ない。
――私が家に戻らぬのは、ずいぶん前からの話だ」
と付け加える。
「それじゃ、寂しいでしょうね」
安堵したのか、御剣は愛撫を再開し始めた。
「私は駄目です。子供と離れて暮らすなんて考えられない」
「だろうな」
彼の指を受けながら、私は昼間歩いた川べりを思い浮かべていた。
時折振り返る御剣の笑顔。
「よく晴れていたな」
「今日?」
「ああ」
「急にどうしたんです」
御剣は苦笑しながら交わる体制に移る。
犯罪と罪人と向き合う毎日で、今まで季節を思う余裕も無かった。
部屋で待ち合わせ、部屋で別れるのが当たり前の私たちが、日のあたる場所を歩いたのはあれが始めてのことだった。
――そして、それが最後でもあった。
別れは急速に訪れた。
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