二 番 目 に 大 切 な 人
『ご用件がある方は、発信音の後にメッセージをお入れください。
終わりましたらシャープを押してください』
「もしもし。成歩堂だけど、しばらくうちに来ないで欲しいんだ。
しばらくというか、これからずっと。
そう、仕事が忙しいんだ。
フリーターのお前と違ってシフト入れてその通りというわけにはいかないし。
うん、はっきり言って迷惑だった。
失恋で大騒ぎしているときにつきあわされるのも悪いけどもうごめんだよ。
死にたくなった時は勝手に死ねばいい。それじゃあ」
留守電を入れてからも電話は来た。
無視しているとそのうち来なくなった。
置きっぱなしだったゲーム機を玄関先に出しておくと、
あくる日なくなっていた。
代わりに、ドアノブにスーパーの袋が引っかかっていた。
中には木綿豆腐が三丁。それだけ。
ぼくは以前通りに仕事に打ち込むようになった。
そして今度こそ、どんな隙も入らないように、
しっかりと心を閉じた。
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