派手に転倒したおれは、擦りむいた自分の膝を見て内心小躍りしていた。
「保健室行ってくる!」
5時間目の体育は自習で、勇は「寝てくる」と保健室に引きこもったきり。
大好きな野外授業も、勇がいないと味気なく感じる。
たとえ「だりー」しか言わないとしても、やっぱりいてくれたほうがなんぼか張りが出る。
おれはグラウンドを走りこみながら、勇を気にして校舎の方ばかりを見ていた。
で、その甲斐あっての転倒。
擦りむいた膝からはうまいことに血が滲み出ている。
わざと転んだわけじゃないけど、これで保健室に顔を出す口実ができたってもんだ。
「小林、大丈夫かぁー」
三角ベースをやっていたクラスメートらが、ボールを投げる手を止めてこちらを見ている。
「いたそー」
「いてー!いてーから手当てしてくる!」
「なんでそんなニコニコしてんだー!」
怪訝顔のバッテリーに親指を立て、なるべく痛がりながら保健室へと走った。